あなたの職場の新卒離職率はどれくらいですか?
今回は新卒看護師が離職する原因である『リアリティショック』について知り
改善策を検討します
リアリティショックとは?
定義
リアリティショックの定義としては、平賀・布施,2007の論文がよく引用されています。
その文献によると、このように定義されます
「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後の実社会での実践準備ができたと考えていたにもかかわらず,実際に職場で仕事をした時に、まだ準備ができていないと感じる新卒専門職者の現象や特定のショック反応を表す言葉である」
(平賀・布施,2007)が1975.Kramer の論文から定義を訳したもの
つまりは、学生時代に抱いていたイメージと就職して体感した現実とのギャップというところです
リアリティショックは新人看護師が早期離職する原因として最も多いものです
現状
リアリティショックは新人離職(1年以内の退職)の主な原因です
そのため、超高齢化社会に突入が目前で「看護師を増やしたい」と考えている国も対策をうっています
平成22年4月に新人看護職員の研修ガイドラインをもうけ、努力義務として各施設へ研修を促しています
条件を満たした研修を行う場合、その施設へ国からの助成金が支給されるとあって
現在多くの施設が新人研修を導入しています
せっかく来てくれた
新人が辞めていくのは施設にとっても痛手です。。。
また、看護学統合実習というまさに「臨床との統合」を目的とした実習も導入されました
その効果あってか、以降の新人離職率は徐々に低下
2017年度は7.5%、10年前と比べると1.7%もの低下です
たったの1.7%?
と思われるかも知れませんが、その違いを2007年の新卒看護師の数46000人で計算すると
2007年9.2%の新卒離職者は4200人、もしも2017年の7.5%だったら3450人
全国で750人の違いになります
そう考えると、現場の努力しだいで辞めなくて
よかった新卒看護師がたくさんいたと分かります
原因
新人看護師が陥るリアリティショックの原因は各種文献に記載されています
その内容は主に以下3点の就職前と就職後の違いにあります
- 勉強法
- 労働
- 自己イメージ
この3つは大なり小なり
ほぼ全ての看護師が感じるものです
1.これまでと違う勉強法
学生時代の勉強は暗記要素がつよく「答えのある問題」に対応するためのものです
しかし、看護師として臨床に出ると「答えのない問題」が山積み、優先順位をつけたり応用問題ばかりの現場に困惑します
学生時代に学業が優秀だったとしても、実際の業務でスムーズにいくとは限りません
これまでの勉強法も維持しながら『働き方』について学習する必要があります
2.本物の労働
それまでにアルバイト経験のある人は多いですが、看護師としての労働は一味も二味も違います
実習では感じることのなかった「患者の人生への責任」がのしかかる重圧、多重業務の苦痛が新卒看護師を苦しめます
また、環境が悪いところだと、想像していた「優しい先輩・プリセプター」がいないというショックが大きいです
弱音を吐くと「あんた給料もらってんでしょ!?」
とか言われたなぁ、そりゃそうだけど、つらかった・・・
3.自己イメージの崩壊
思い描いていた『新人時代からバリバリ仕事をこなす自分』のイメージが崩れて自信を喪失します
看護師の業務には現場をよく知らないとできないことも多く
就職したばかりでできないのは当然ですが、目の前でバリバリと働く先輩と自分の違いに途方に暮れてしまいます
ドラマのようにはいきませんでした。。。
リアリティショックへの対策
【知らせる】リアリティショックの存在を認識する
まず敵(リアリティショック)を知ること
『理想と現実の差』は必ずあると新人看護師に認識を促します
例えば
「入職したては誰でも何も出来ない、どんな先輩たちも同じだった」
と、ハードルを下げてあげます
目の前でバリバリ働く先輩たちも、新人の頃は悩んでいたし
むしろ、今でも悩みながら仕事をしている現実を伝えます
うまくいけばリアリティショックに陥りそうなとき「こういうことか!」と自分で気持ちを整理できます
指導者にもリアリティショック対策が必要
新人看護師の指導者にも『指導が上手くいかないこともありえる』との認識を持たせます
人を指導することに方法論はあっても、答えはありません
わたしは指導に向いていない、、、
と思う必要はなく、振り返りを重視するようにします
【気付く】兆候は?
新人にかぎらず、精神の不調はまず睡眠に影響します
なので「眠れてる?」と声をかけましょう
もし、勉強などで眠れていないようなら心配せず睡眠をとるよう説明します
問題は「寝付きが悪い」「何度も目が覚める」「目覚めが早すぎる」などの睡眠障害の症状です
他にも身体の不調「腹痛・動機・吐き気」には注意が必要です
本人もストレスが原因と気づいていない事があります
管理者や指導者が気付いてあげられるといいですね
【表出させる】定期的な面談と1年目研修
業務中の声かけとは別に面談の機会を設けます
あくまで”表出させる”つもりの面談なので、新人に喋らせるように質問します
また、新人研修での『同期のつどい』を有効活用します
部署のスタッフでは全体研修に関わることはありませんが「いろいろ話しておいで」など声をかけて研修へ送り出しましょう
【休ませる】業務負担の調整
よくある指導者の間違いとして『到達目標まで一直線すぎる』ことがあります
緊張感が持続すると疲労から精神の不調につながるため、てきどに負担を軽くする期間を作ります
その期間に指導者との面談で『振り返り』や『感情の表出』を促し就職してから感じる仕事のギャップを言語化させるのが効果的です
終わりに
リアリティショックは社会人なら誰もが通った道です
なので、自分の頃を思い出せれば新人への対応も自然と分かるのですが
管理の視点では体系的に取り組む必要があります
新卒離職率には多くの文献がありますのでぜひ検索してみてください
自部署にあった解決策が見つかるかも知れません